Mizudori’s home

二次創作まとめ

冷たい指先

【サトセレ】

■アニポケXY

■アニメ本編時間軸

■SS

■声優ネタ

 

 

***

 

なんとか身動きを取ろうとしてみるが、後ろ手で拘束された手錠が邪魔をする。
カチャカチャと金属音を立てるその手錠は、全く外れる気配がない。
ならば立ち上がってこの部屋から出ようとすれば、重石のついた足枷が邪魔をする。
テールナーたちがいてくれれば、きっと状況を打開できるのに
そんなことを考えても仕方がない。
テールナーヤンチャムニンフィアが入っているモンスターボールは全て奪われてしまい、手元にはない。
自由が効かないストレスと、タイルで出来た床の冷たさが、じわじわとセレナの体力を奪って行く。


「大人しく待ってたみたいだな」


錆びついた重そうな扉が開き、見慣れた仲間が部屋の中に入ってきた。
ずっと昔から愛しく思っていたその人物は、冷たい視線をセレナへと浴びせる。
笑顔が似合うその顔からは冷酷さが滲み出ており、まるで別人である。
怯えた表情で見上げてくるセレナに、彼は笑みを浮かべる。
狂気的なその笑みは、セレナにとって恐怖を煽る材料でしかない。


「サトシ


震える声で彼の名を呼ぶ。
足枷のせいで座ったままであるセレナに近寄ろうと歩を進めると、彼女はなんとか逃げようと後ろに身をよじらせる。
しかし壁まで追い詰められたところで、サトシはしゃがみ込み、セレナと視線を合わせた。


「言っただろ?俺様はもう“サトシ”じゃねぇって」
「誰なの? あなたは一体
「この千年リングに宿る闇の魂だ」


サトシが首からぶら下げている金色のリング。
そのアイテムに秘められた魂だと語る彼だが、にわかには信じられなかった。
けれど、今のサトシの表情は、普段の口調や性格からは想像できないほど冷酷なもの。
姿や声は同じでも、セレナのよく知るサトシは、決してこのようなことはしなかった。


「シトロンやユリーカは?」
「別の部屋で眠ってるぜ。あの電気ネズミと一緒にな」
「私をどうするつもり!?」
「どうしようかねぇ。あいつらの様に眠ってもらうもよし、俺の意のままに動く操り人形にしてやるもよし。それとも


サトシの指が、セレナの顎を掴み上げる。
無理やり上を向かされ、サトシと強制的に顔を付き合わせるセレナ。
自分を見て微笑むサトシの指は、凍ってしまうほど冷たいものだった。


「お前、この宿主のことが好きなんだろ?」
「っ!」


心の奥深くまで見透かされている様な瞳に貫かれ、セレナは言葉を失ってしまう。


「俺様の元の宿主は体が弱くてな。不便な事も多かったが、このガキは違う。ガキの割に体力があるらしい。その分精神力があるのが面倒だが、こいつは俺にとって居心地がいいってわけだ」
ふざけないで。サトシの体はサトシのものよ!」
「へぇ相当このガキが大切らしいな」


目を細めるサトシ。
そんな彼に反応する様に顔を背ければ、顎を掴まれていた手が離れていった。
しかしその代わり、冷たい手はセレナの胸元へと降りてくる。
シュルシュルという音に驚き、自分の胸元へと視線を向ければ、サトシの手によって胸元の青いリボンが解かれていた。
そのリボンは、かつて愛しいサトシが贈ってくれた物である。


「なにを!」
「この宿主には暫く世話になる。体を癒してやろうと思ってな。お前を使って」


握られた青いリボンは後ろに放られ、胸元のボタンはゆっくりと外されていく。
はだける胸元、露わになる下着。
抵抗しようにも、両手を後ろ手に拘束している手錠と足枷が邪魔をする。
なにより、目の前の人物がサトシであるという真実も、セレナを混乱させる。


「ガキとはいえ、俺様の言ってることの意味くらい分かるだろ?少しは満足させてくれよ?」
「や、やだ!やめて‼︎」
「そんなに喚くなよ。好きなんだろ?この“サトシ”のことが」


右手で胸元をまさぐりながら、左手はスカートの下の太ももを内側からゆっくりと撫でている。
くすぐったい様な、そんな初めての感覚に、セレナは恐怖を感じていた。
きっとこれが見知らぬ誰かだったなら、心の底から嫌悪し、嫌だと叫び散らすことが出来ただろう。
けれど、今セレナの首元に舌を這わせているのは、他の誰でもないサトシなのだ。
別の人格だとか、別の魂だとか、そんな複雑な事情はセレナにはわからない。
サトシの顔で、声で、指で触れられれば、セレナは、完全に拒絶することが出来ない。
そんな自分が情けなくて、弱くて、セレナはその瞳から涙を零す。


「サトシっ、お願いやめて!」
「“サトシ”はもういない。この体も、お前も、俺様のものだ」


服ははだけ、セレナの両肩が露わになっている。
鎖骨に舌を這わせながら、サトシの右手は背中へと回っていた。
プツンと音を立て、下着のフォックが外される。
下着の肩紐を片方ずらされるのとほぼ同時に、セレナの頬からは大粒の涙が溢れた。


「違う!私の知ってるサトシは、こんなことしない!貴方なんて、サトシじゃない!」


悲痛な叫びは、狭い部屋に響き渡る。
涙で震えるその声に反応してか、セレナの体を弄るサトシの手が止まった。
触れているその冷たい手は僅かだが震えている。
どうしたのだろうと恐る恐る視線を向けてみれば、サトシは何かに耐える様な険しい顔をしていた。


「サトシ?」


もう一度名前を呼んでみる。
するとサトシは、歯を食いしばっていた口をゆっくりと開き、絞り出すかの様なかすかな声で言った。


「セレ、ナ………


それはセレナが長年想いを寄せ続けた、強くて優しい彼の声であった。


END